日本短編映画「BAKEMONO」

監督:大嶋 英幹の想い

「不自然な時代に翻弄され、失いつつあるもの。
僕は、日本人として、この映画から取り戻す。」

僕は、この映画を通じて、日本人という民族の生命の根源にある「魂」に触れたい。そう考えている。日々の暮らしから、感じること。メリットか。デメリットか。ポジティブか。ネガティブか。善か。悪か。生か。死か。
現代社会は、足りないものを支えあう相互補完の考えではなく、一方を選択し、一方を切り離すことを迫られるような流れにあるのではないか。片面だけを美化し、片面には蓋をする。そんな不自然なバランスとなってしまってはいないか。僕は、そう感じている。
しかし、ほんとうは、生命の生死も、人間の善悪も、決して切り離せない存在のはずだ。このまま、こんな不自然なバランスを続けていけば、必ずや何かを失ってしまうだろう。大切な、何かを。あるいは、それは、日本人としての誇りや魂と呼ぶべきものかもしれない。そう感じるからこそ、僕は、今こそ日本人の「魂」に触れたいと思った。そして、そんな風に考えていたのは、僕だけではなかった。
身体表現。映像。写真。絵。文…。僕と同じような考えを持ち、使命を感じていた、様々な表現のプロであるクリエイターたちが、いつしか自然と集まり出した。僕らは、時間を惜しまずに何度も語り合った。語り合ううちに、憤りを覚える者もいれば、涙を流す者もいた。それでも、僕らは何度も何度も語り合った。そうして、僕らは、現代の日本人像を壊し、未来に向けて、「日本人」の本来あるべき姿を見出していくことを決意した。その決意の結晶が、映画「BAKEMONO」である。
人間誰しも、何らかの思想を持つ。それを表す、表現の方法も持つ。自分の頭で考え、自分の力で表現しながら、社会の中で自分らしく生き抜き、やがて死を迎える。そんな術を、誰しもが持っている。それは、なんと誇らしく、美しいことだろう。そして、その背中は、必ずや子どもたちが見ているだろう。次の世代へと、着実に継承されていくはずだ。そのためにも。僕らは、このあたりで覚悟をする必要があるのではないか。自らの役割を放棄し、愛想笑いばかりを振りまく大人たちよ。未来や夢に希望を見出せない、無関心な若者たちよ。あなた方の中にも、情熱が、必ず存在する。情熱は、あなたの魂を呼び覚ます。その魂を隠すことなく、ありのままの自分で生きようじゃないか。自らの怒りをも真っ直ぐに吐き出し、人間らしく生きようじゃないか。僕は、そう言いたいのだ。そう伝えたいのだ。その魂は、やがて、後を生きる人間の大きな希望になると信じて。
「BAKEMONO」。この映画は、日本人の希望の糧を、目指す。


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